殿部から下肢にかけての痛みやしびれを訴えます。またこの病気では長い距離を続けて歩くことができません。もっとも特徴的な症状は、歩行と休息をくりかえす間欠性跛行(かんけつせいはこう)です。腰部脊柱管狭窄症では腰痛はあまり強くなく、安静にしているときにはほとんど症状はありませんが、背筋を伸ばして立っていたり歩いたりすると、ふとももや膝から下にしびれや痛みが出て歩きづらくなります。しかし、少し前かがみになったり、腰かけたりするとしびれや痛みは軽減されます。進行すると、下肢の力が落ちたり、肛門周囲のほてりや尿の出が悪くなったり、逆に尿がもれることもあります。
腰椎(ようつい:腰の骨)には脊髄とそれから枝分かれした神経が入っています。これらは硬膜(こうまく)と呼ばれる膜でできた袋に包まれて、髄液(ずいえき)と呼ばれる液の中に浮かんでいます、この部位の枝分かれした神経の塊は、見ようによっては馬の尻尾のように見えるので、馬尾(ばび)と呼ばれます。神経はこの硬膜から出て、神経根と呼ばれ下肢の筋肉や皮膚、あるいは膀胱に広がっていきます。加齢、労働、あるいは背骨の病気による影響で変形した椎間板と、椎体や椎間関節から突出した骨などにより、この馬尾や神経根が圧迫されます。
脊柱管は背骨、椎間板、関節、靭帯などで囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。年をとると背骨が変形したり、椎間板が膨らんだり、靭帯が厚くなって神経の通る脊柱管を狭くして(狭窄)それによって神経が圧迫を受け、神経の血流が低下して脊柱管狭窄症が発症します。腰部脊柱管狭窄症は、圧迫されている神経の部位によって、神経根型、馬尾型、混合型の3つのタイプに分けられます。馬尾はそもそも骨盤内の泌尿器や生殖器の機能をつかさどる自律神経が通っているため、馬尾型では、馬尾が圧迫され症状が重症化すると、歩行中に腰の周囲がほてったり、ひん尿や残尿感、便秘といった排尿排便障害が生じます。勃起不全などの性機能不全をきたす可能性もあります。腰部脊柱管狭窄症は椎間板ヘルニアに比べ中高年に発症することが多いようです。
単純レントゲン写真である程度は推測できますが、より詳しく診断するためにはMRIや脊髄造影などの検査が必要となります。下肢の動脈がつまって血行障害を生じた時にも似たような症状となることがありますので注意が必要です。