前の病院では診察のたびに水を抜かれましたが、水を抜くのは癖になりませんか?
よく近所のおばちゃんに、「あんた、膝の水ぬいてもろたんか?癖になるからやめときや。」と言われたと、診察室でお話になられる患者様がおられます。実際には、抜かなければならないほど溜まっている時点で癖になっていると言っても良いと思います。抜いたから癖になっているわけではありません。極端な例ですが、「鼻水が出たら、かむでしょう。」と説明することもあります。水とは正確には関節液といいます。正常の関節の中には潤滑油としての役割を果たす関節液が存在します。関節液は滑膜から作られ、同時に吸収されており、生産と吸収のバランスが保たれているため潤滑油程度の最小限の関節液が存在します。その関節液の生産と吸収のバランスが崩れると、関節液が溜まることになります。原因としては、外傷のあと、加齢性の変化(軟骨の磨耗)などの関節内部の炎症があげられます。たとえば、大量に水がたまると、圧迫感を伴う膝の痛みの原因になります。その際には、水を抜きます。しかし、完全に炎症が治まっていないために、再び水がたまります。このために、水を抜くことが癖になって水がたまるとの誤解をうむことがありますが、そうではありません。関節炎症状を抑えることで水腫は減ってきますから、一般的には十分吸収できない過剰の関節液は抜いて、同時に炎症を抑える薬(ステロイド)や、ヒアルロン酸を注入して関節内部の環境を改善させます。このような適切な治療により水は自然になくなります。過剰な関節液の貯留が続くと、関節の袋が伸び、筋力の低下を引き起こし、更に関節炎が長引くという悪循環に至りますので適切な治療を受けられることをおすすめします。