膝の痛みは、外来患者の訴えのなかでは、腰痛の次に多いものです。その大半は、加齢に伴う変形性膝関節症です。
「あなたは、年だから仕方がない。」
「太っているから、仕方がない。やせなさい。」
「運動不足だから、どんどん歩きなさい」
などの言葉を医者に言われて、落ち込まれる患者さんも少なくないと思われます。たしかに、老化や体重増加や筋力の低下が主な原因であることは間違いありません。他に考えられるのは若いころの外傷(けが)も考えられます。原因は一つではありませんが、老化に関しては、同年齢でも全く痛みのない人もたくさんおられます。また、白髪やしわと違って、目に見えないため、いきなり変形の進んだレントゲンをみせられるとドキッとされる方もおられます。体重の増加や筋力低下も、ある意味では、痛みのために運動ができずに陥る悪循環であるとも考えられます。
変形性膝関節症では、関節軟骨が弾力性を失い、使い過ぎによりすり減り、骨と関節が変形してきます。その主な症状は膝の痛みと水がたまることです。変形性関節症の初期には立ちあがり、歩き始めに膝が痛みます。(休めば痛みは楽になります。)変形性関節症の中期には歩くと膝が痛み、正座、階段の昇り降りが困難になり、動作が不自由になります。変形性関節症の末期には、見た目でも変形が目立ち、膝がピンと伸びず、歩行も困難になり日常生活が不自由になります。
そこで、まず予防として日常生活の注意点をお話させていただきます。
1)太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)の筋力が低下すると、膝への負担が大きくなります。太ももの前の筋肉を鍛える運動をしましょう。
2)体重が増えると、膝への負担が大きくなります。少しでも膝への負担を軽減するために適切な体重を維持するように心がけましょう。
3)膝を冷やさないようにしましょう。夏はク-ラ-などに注意しましょう。
4)可能であれば洋式トイレを使用しましょう。
5)急に痛む時は冷やすが、慢性化した膝の痛みには温めて血行を良くしましょう。
次に治療法ですが大きく分けて、以下の4つの方法です。
1)日常生活の注意と痛みを伴わない運動療法の指導(大腿四頭筋訓練など)
2)ホットパック、マイクロ、干渉波などの消炎鎮痛療法、痛み止めやシップなどの投薬、膝関節内への注射(ヒアルロン酸ナトリウムやステロイドなど)
3)膝を安定させるためのサポーターや足の下の中敷(足底板)などの装具療法
4)以上のような治療で効果がない場合は、関節鏡、骨きり術、人工関節置換術などの手術を行います。