肩こりについて

　肩こりは国民病と言われるほど、多くの人が悩まされています。病院に行くほどの痛みや不具合が少ないので、詳しいことは把握されていませんが、長時間のデスクワークやスポーツ、車の運転などで首や肩、背中の筋肉に張った、凝った、痛いなどの感じがした経験は誰しもあると思います。時には頭痛、嘔気を伴うこともあります。
　肩のこる理由は、肩の周辺の筋肉の問題です。肩の周辺には僧帽筋（そうぼうきん）や肩甲挙筋（けんこうきょきん）、菱形筋（りょうけいきん）など様々な筋肉が重なり合って、そのほとんどが肩甲骨につながっています。（首の後ろから肩、背中にかけて張っている僧帽筋という幅広い筋肉がその中心となります。）それらの筋肉は成人では重さが約５ｋｇもある頭部を支えたり（頭部の重さは男性と女性と比べても差はありません。）、腕をつりさげたり、腕を支えて動かします。疲労やストレスなどによってこれらの筋肉が緊張し、この緊張状態が続くと、血流が悪化し血行障害におちいり、筋肉への栄養補給が妨げられる一方、筋肉にたまった乳酸などの疲労物質が除去されにくいという悪循環で、だんだんとこわばりが強くなります。これが、いわゆる肩こり、筋肉のこりの原因です。
　ただし、ただの肩こりと思っていても、頚椎（けいつい：首の骨）や頚髄（けいずい：首の後方の脊髄神経）疾患、肩関節疾患の局所症状のひとつとして起こっていることもあり、症状が続く場合は、整形外科での詳しい検査が必要になることがあります。
　また全身の問題が原因で起こる肩こりもあります。例えば、腰や膝、顎関節（がくかんせつ）が原因となる肩こりがあります。腰や膝の痛みのために姿勢や歩き方が悪くなり、肩がこることがあります。片方の顎（あご）だけで噛むことや顎関節症（耳の前の関節で噛むと音がする）のために肩がこることもあります。また、高脂血症などの内科的な病気が血流を悪くして肩のこりを引きおこすこともあるようです。
　肩の周りの筋肉は、こうした身体のちょっとしたバランスの崩れにも影響を受けやすいのです。肩こりの原因が肩、くびの周りだけの問題なのか、全身の問題が原因でおこっているのを正確に診断することが大事です。

肩こり（基礎疾患がない場合について）

原因：

首や背中が緊張する状態での作業、姿勢（猫背、前かがみ）、運動不足、精神的ストレス、なで肩、冷やしすぎなどが原因になります。

予防：

同じ姿勢を長く続けない。
蒸しタオルなどで、頚部、肩を温めて筋肉の血行を良くして疲労をとる。
適度な運動や体操を行う。
入浴し身体を温める。

治療：

運動療法（肩こり体操）、温熱療法（蒸しタオル、入浴）、局所の注射、内服薬（筋緊張緩和剤）、外用薬（シップ、塗り薬）の使用を行います。 当然、基礎疾患があればその加療を行います。