Q&A

肩の痛み

肩が痛く、動かすと音がなります。すじを痛めたのではないかと思うのですがレントゲンで肩のすじなどは写るのでしょうか?またレントゲン以外の有効な検査は?
  肩関節の周囲には、上腕二頭筋(力こぶをつくったときに盛り上がる筋肉)が上腕骨頭の前の溝に近づきすじになる上腕二頭筋長頭腱(じょうわんにとうきんちょうとうけん)や、肩甲下筋(けんこうかきん)、棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょっかきん)、小円筋(しょうえんきん)の4つの小さな筋肉が合流してアキレス腱のようなすじになり上腕骨頭に付着する腱板(けんばん)、さらに腱板の上には肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)というふくろがあります。これらは肩の痛みの主原因になることが多いのですが、レントゲンでは写りません。大きな腱板断裂であれば、レントゲンで、肩峰と骨頭の隙間の狭小化、腱板の付着部である上腕骨の骨の不整像、ア-チを形成している肩峰に骨棘(こつきょく:骨のとげ)などを認め、腱板断裂があることが予想されますが、腱板そのものが描出されるわけではありません。今まではレントゲンで異常がなければ、また確定診断ができなければMRI、関節造影などの検査を追加して行い、詳しく調べたのですが、最近では超音波診断装置(エコ一)の進歩によりこれらの多くがわかるようになってきました。
 当クリニックではエコ一を用いて肩峰下滑液包、腱板、上腕二頭筋長頭腱などを調べ、肩峰下滑液包炎、肩峰下インピジメント症候群、腱板断裂、上腕二頭筋長頭腱炎(腱鞘炎)、上腕二頭筋長頭腱断裂といった病態のはっきりした疾患を診断しています。
 従来は、整形外科領域ではあまり使用されなかったエコ-ですが、最近は機械の進歩により整形外科領域の運動器(筋、腱など)にも応用されるようになって来ました。特に肩関節、肘関節には抜群に威力を発揮し、野球肩、野球肘、五十肩や肩の腱板断裂などを詳しく検査することができます。
 たとえば腱板断裂では腱板を構成する4つの腱のうち、棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱の断裂の有無がすべてわかります。また棘上筋腱、棘下筋腱断裂では肩峰下滑液包面断裂、関節包面断裂などといった断裂部位の確定や部分断裂、不全断裂、完全断裂といった断裂の損傷程度まで、すべてエコ一でわかります。また腱板断裂の多くは肩峰下滑液包炎を合併しており、その炎症の程度(水腫の有無やその程度)もわかります。いまや肩関節での腱板に対するエコ一解像度は、MRIを超えているとも言われています。
 エコ一の利点は、①無侵襲であり、診察室で手軽に使える便利さがあります。②検査中、患者さんと一緒に検査画面を見ることができ、その場で検査結果がわかります。③肩関節であれば動かしながら筋や腱などの動きを確認できます。④検査は痛みや危険性を伴わないため、繰り返し行うことができます。またMRIと違い、⑤健側(痛くないほうの肩)もその場で検査ができ、左右の比較が簡単にできます。⑥MRIやCT検査にくらべて費用は安価です。そして最大の利点は⑦エコ一を見ながら同時に治療ができるということです。これはエコーで、痛みの原因となっている場所を想定し、例えば肩の痛みは肩峰下滑液包、肩甲上腕関節、筋、腱、靭帯、関節包など多くの原因が考えられるため、痛みの原因と考える部位にエコーをみながら注射の針を誘導し確実に薬液を注入し痛みをやわらげることができます。エコーを用いて、薬液を注入する手技をハイドロリリースと言います。
 当クリニックでの初回の肩関節エコ一検査時間は、約2分程度です。(エコ-ガイド下ブロックを含めると約5分程度です。)肩関節疾患でお悩みの方は、一度当クリニックへお越しください。