手根管症候群は、手指を曲げる腱とともに走行している正中神経が、手首(手関節)の掌側(しょうそく:手のひら側)の手根管というトンネルで圧迫を受けることによって生じます。この部位では強靭な靭帯(横手根靭帯)によって腱と正中神経が束ねられているため、ここで圧迫を受けると最も弱い正中神経の症状が出現するのです。正中神経は親指からくすり指までの4本の指の手のひら側に分布し感覚をつかさどるため、この部位にしびれや痛みが生じます。また、物をつまむなどの親指の動きも担っています。
多くは原因不明で、誰にでも起こりうる病気なのですが、圧倒的に女性に多く生じます。女性では妊娠や閉経の時期に女性ホルモンのバランスの変化などでこの症状が生じ易いのです。また、同時期に左右の両側の症状が出る場合もめずらしくありません。手首をよく使う職業やごく普通の日常生活(家事など)で手首をよく使う動作によってもしびれが増強します。手関節の炎症が生じやすいリウマチの方や透析を受けている方、手関節部の骨折後の変形のある方にも生じることが多いのです。
ひとさし指、中指を中心にしびれ、痛みが出ます。しびれや痛みは親指、くすり指に及ぶこともあります。しびれや痛みは手のひら側に感じ、手の甲の部分では感じません。くすり指は親指側の半分にしびれや痛みがあります。
これらのしびれや痛みは明け方に強くなり、手を振ることで楽になります。
手首をよく使ったあとにしびれや痛みの症状が増強します。
親指とひとさし指の先の感覚が鈍くなり、紙やお札が数えにくくなります。
親指の付け根(母指球)がやせてきて、縫い物やボタンかけなどの細かい作業が困難となり、親指とひとさし指できれいな丸をつくるOKサインができにくくなります。
物をつまみにくいなどの親指の動きにくさを感じます。
手首(手関節)の手のひら側をたたくとしびれや痛みが指先(親指、ひとさし指、中指、くすり指)に走ります。(Tinel徴候:ティネル徴候)
手首を曲げてしばらくすると症状が悪化します。(手関節屈曲テスト)
神経伝導速度の計測により、正中神経の圧迫部位を調べ診断します。
頸椎症性神経根症状、頚椎椎間板ヘルニアの神経根症状や糖尿病性末梢神経障害などとの鑑別診断を必要とします。