70歳代の男性です。
安静にしているときにはほとんど症状はありませんが、背筋を伸ばして立っていたり歩いたりすると、おしりのまわりから、両方の太ももから下肢や足の指にかけて、しびれや痛みが出て歩きづらくなり、長い距離を続けて歩くことができません。しかし、少し前かがみになったり、腰かけたりするとしびれや痛みは軽減されるため、歩行と休息をくりかえしながら歩きます。
糖尿病などの内科的病気などはありません。
どんな病気が考えられますか? またその治療は?
上記の症状は間欠性跛行(かんけつせいはこう)と考えられ、腰部脊柱管狭窄症が疑われます。
腰部脊柱管狭窄症は70歳代では27%、80歳代では38%と年齢と共にその頻度は高くなります。
間欠性跛行(かんけつせいはこう)をおこす原因としては、糖尿病などによる血管性の病変(慢性閉塞性動脈硬化症 まんせいへいそくせいどうみゃくこうかしょう: ASO )などの可能性もあるのですが、血管性の病変では前かがみになっても症状はよくなりません。
ただし腰部脊柱管狭窄症では、前かがみになると楽になり症状が改善するため、自転車には乗り続けられるのが特徴です。
腰部脊柱管狭窄症では、腰や下肢の脱力感や、足の裏に何かが張り付いたような違和感を訴える事があります。
また進行すると、下肢の力が落ちたり、肛門周囲のほてりや尿の出が悪くなったり、逆に尿がもれることもあります。
腰部脊柱管狭窄症だと診断されれば、症状がしびれのみの時は内服で様子をみます。しびれが強い時や痛みを伴う場合には消炎鎮痛剤などの内服、リハビリテーション、コルセット、硬膜外ブロックや神経根ブロックなどを行います。また間欠性跛行(かんけつせいはこう)を認める場合は脊髄の神経の血行を良くする内服や注射で症状が改善することもあります。
最近ではリリカという内服薬が神経の痛みに関して非常に効果があります。
しかし歩行障害が進行し、日常生活に支障が出てくる場合や排尿障害があるときには手術を考慮します。
予防としては、日常生活で姿勢を正しく保つことが必要です。神経の圧迫は腰をまっすぐに伸ばして立つと強くなり、前かがみになるとやわらぎますので、歩くときには一本杖をついたり、シルバーカーを押して腰を少しかがめるようにしましょう。そうすると楽に歩けます。また、自転車の移動も痛みが起こりにくく、良い運動になります。