肩関節は骨同士が軟骨で接する「関節面」が小さく、腱板と呼ばれるベルトのような組織が上腕骨頭の大部分を覆っています。腕を持ち上げてバンザイの状態にすると、腱板は肩峰(肩甲骨の最外側)や靱帯からなる「アーチ」の下に潜り込む仕組みになっています。その「アーチ」と腱板の間には肩峰下滑液包という潤滑液的なクッションのような組織もあります。
腱板は、棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱、小円筋腱の4つからなっています。
その働きは上腕骨頭を関節窩にひきつける働き、上腕骨頭を回旋(かいせん:ひねる)させる働き、肩関節の強力な外転筋である三角筋の筋力を効率よく引き出す働きをしています。
40歳以上で男性(男62%、左32%)に好発します。発症年齢のピ一クは60歳代です。肩の痛みや、運動障害、夜間痛で睡眠がとれないなどが来院する理由です。運動痛(肩を動かすときの痛み)はありますが、多くの患者さんは肩の挙上は可能です。
五十肩と違うところは、拘縮(こうしゅく)、すなわち関節の動きが硬くなることが少ないことです。
他には挙上(きょじょう:肩をあげる)するときに力が入らない、挙上するときに肩の前上面でジョリジョリという軋轢(あつれき)音がするという訴えもあります。
断裂の背景には、腱板が肩峰と上腕骨頭にはさまれているという解剖学的背景と、腱板の老化とがありますので、中年以降の病気といえます。明らかな外傷によるものは半数で、残りははっきりとした原因はなく、日常生活の動作の中で、断裂がおきます。男性の右肩に多いことから、肩の使いすぎが原因となっていることが推測されます。
断裂型には完全断裂と不全断裂がありますが、不全断裂の症状が軽く、治りやすいということはありません。若い年齢では野球などの投球時の障害で起こることがあります。
診察では、肩が挙上できるかどうか、拘縮があるかどうか、肩を挙上して肩峰の下で軋轢(あつれき)音があるかどうか、棘下筋萎縮(いしゅく:筋肉のやせ)があるかどうかを調べます。
単純レントゲン所見では、肩峰と骨頭の隙間の狭小化、腱板の付着部である上腕骨の骨の不整像、アーチを形成している肩峰に骨棘(こつきょく:骨のとげ)などを認めます。(ただし腱板そのものは描出されません。)
当クリニックでは、次に超音波診断装置(エコ一)検査を行います。肩峰下滑液包炎、肩峰下インピンジメント(impingement)症候群、腱板炎(腱板がはれている)、腱板断裂などがあるかをきちんと調べ、診断を確定します。腱板断裂では棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱の断裂の有無や棘上筋腱、棘下筋腱断裂では肩峰下滑液包面断裂、関節包面断裂などといった断裂部位の確定や部分断裂、不全断裂、完全断裂といった断裂の損傷程度まで、すべてエコ一でわかります。また腱板断裂の多くは肩峰下滑液包炎を合併しており、その炎症の程度(水腫の有無やその程度)もわかります。いまや肩関節での腱板に対するエコ一解像度はMRIを超えているとも言われています。