少年野球をしている息子が、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(じょうわんこつしょうとう りだんせいこつなんこつえん:外側型野球肘)との診断を受けました。今後どのような治療をされるのでしょうか?
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の発症初期(透亮期)の場合(単純レントゲン写真像でいう透亮期)、投球の中止などの保存加療で、9割以上が、病巣の骨軟骨が修復され治癒すると言われています。(投球の中止期間は、少なくとも約3ヶ月以上で、多くの場合は約6ヶ月から1年となります。)ただし、約1週間程度の投球の中止で痛みや腫れが軽減することがあるため、医師の指示を守らずに、投球を再開し、症状が悪化することもあります。
また分離期(進行期)でも、投球の中止などの保存加療で、約半数は、病巣の骨軟骨が修復され治癒すると言われています。(投球の中止期間は、透亮期と同様に、少なくとも約3ヶ月以上で、多くの場合は約6ヶ月から1年となります。)
透亮期や分離期で、保存的治療で治癒傾向がなければ、手術を行います。
遊離期(終末期)に至れば、保存療法での治癒は期待され難く、多くは手術の適応となります。
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の手術方法としては
●ドリリングといわれる骨の死んだ部分にたくさんの小さな穴を空ける方法(これはほとんどの場合、関節鏡で可能で、おおよそレントゲン分類の透亮期や分離期の一部に行われます。また、遊離期で骨の欠損した部分にも行われます。)
●分離している骨軟骨片を骨移植などを併用して固定する方法(これは関節を開く必要があり、分離期や遊離期の中でも早い時期に行われます。)
●上腕骨を楔(くさび)状に骨切りする方法【関節を開き、上腕骨小頭と橈骨頭の関節面の徐圧(じょあつ:圧迫がかからないようにする)を行い、局所血流の増加などによる上腕骨小頭病変の改善を期待する手術で、分離期や遊離期に行います。また同時に骨移植などを併用して行います。】
●遊離体(関節鼠)の摘出(これは関節鏡視下に可能な場合と関節を開いたほうが速く確実な場合があります。)
などがあります。
ドリリング、骨軟骨移植術、上腕骨楔状骨切り術、遊離体摘出術などの手技、成績も向上していますが、保存療法で修復したときのような滑らかな関節面は得難くなり、やはり早期発見、早期治療が重要であると考えます。
上記のごとく、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の発症初期に適切な治療を受ければ、遊離体を形成することなく治癒する可能性が高いのですが、やっかいなのは初期には痛みを訴えないことが多く、気付いた時には進行しているという点です。上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の分離期や遊離期に進行すると野球に復帰できる例が少なくなり、変形性肘関節症に移行しやすくなります。そのため予防が第一であり、投球制限を遵守することが重要です。
運悪く上腕骨小頭離断性骨軟骨炎を発症してしまった場合には少しでも早い段階でその流れを断ち切ること(早期発見・早期治療)が重要になります。治療には監督・コーチ・家族の十分な理解が必須となります。