サッカ-をしていて、芝生に足がひっかかり、膝を内にひねりました。それから膝の内側の痛みが出てきました。膝の腫れはほとんどなく、引っかかり感もありません。どんな障害が考えられますか?
上記の症状から膝の内側側副靭帯(MCL)の損傷の可能性が考えられます。
内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい:MCL)損傷は膝の靭帯(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯)損傷の中では最も頻度が高く、膝に大きな外反力(膝をX脚のようにする力)が加わって発症します。ラグビ一などの互いに衝突しあうスポーツやスキーなどでも受傷します。損傷部位は内側側副靭帯(MCL)の大腿骨起始部(きしぶ:靭帯が骨につくところ)付近が多く、同部位を押すと痛みを訴え(圧痛:あっつう)、膝を外反すると痛みが増強します。圧痛のみで、外反不安定性をほとんど示さない軽症例(第1度損傷)から著明な不安定性を示す重症例(第3度損傷)まであります。第3度損傷は、ほとんどの場合、前十字靭帯損傷を合併しており大量の関節血腫を認めます。
内側側副靭帯(MCL)は単純レントゲン写真で写らないので、ストレス撮影(膝を外反位にすることで関節の開きを見る検査)で健側(けんそく:痛くない側の膝)と比較し、損傷の有無と程度が診断できます。そのほか超音波診断装置(エコ一)検査、MRI検査で損傷の有無を調べることができます。当クリニックで行うエコ-検査では靭帯そのものを見ることができ、靭帯が腫れている、または切れている、どこで切れているか等もわかります。エコ一でのストレス撮影も行うことができて、靭帯が切れている場合は膝の関節が開くのを健側と比較し確認することができます。
ただし、半月板損傷や前十字靭帯(ACL)損傷の合併の有無を確認することが重要です。
内側側副靭帯(MCL)の単独損傷であれば外反不安定性は小さいので症状に応じて装具(サポ一タ一など)装着などによる保存加療を行います。4~6週間でスポ-ツ復帰が可能となり、予後は良好です。
半月板損傷を合併した場合や前十字靭帯(ACL)損傷を合併した複合靭帯損傷にはしばしば手術が必要です。