マッサージなども局所の血行促進に効果があると思われます。よって基礎的疾患のない局所症状の肩こりに対しては、続けられてもいいと思います。
ただし首から腕にかけての痛みやしびれなどの神経症状がある場合は、マッサ-ジをすることがかえって神経症状を悪化する可能性があるので、まずは整形外科診断を受けられることをおすすめします。
また、肩こりは肩の筋肉に負担がかかればすぐに再燃するので、仕事でマッサ-ジに行く時間がないという方は、できれば自分で仕事の合間でも簡単にできる運動で改善してみてはいかがでしょうか?当クリニックでは肩こり体操の指導もさせていただきます。
上記の症状では、頚椎の中を通る中枢神経である脊髄の通り道(脊柱管)が窮屈になり、脊髄本管が圧迫される脊髄症を生じています。
その診断は椎間板ヘルニアにより脊髄本管が圧迫されると頚椎椎間板ヘルニアの脊髄症、また椎間板の変性や骨棘の形成と背骨をつなぐ靭帯が厚みを増して脊髄本管が圧迫されると頚椎症性脊髄症ということになります。
ヘルニアや脊髄への圧迫などはMRI検査により調べます。
脊髄症状が出現し、下肢の麻痺があり歩行障害が生じている場合は、手術を考慮します。
脊髄症状の具体例は
などです。
上記のような痛みや肩こりは、筋疲労が原因と考えられる状況が多くあります。
筋疲労とは、たとえば、首のむちうち損傷におけるカラ-装着後に続く首から肩にかけての痛みや肩こり、中、高年者の慢性の腰痛における筋・筋膜の痛み、慣れないスポーツや仕事の翌日になっておこる筋肉痛などです。
このような筋疲労に対して、力まかせにもんだり、たたいたり、マッサージをしたりすることは、筋肉の発達したプロスポーツ選手は別として、筋力の乏しいひとにはかえって症状を悪化することがあります。
これは外傷や運動などで痛んだ筋肉の繊維をさらに損傷し、微小な筋肉内の出血や腫れ(はれ)などといった急性障害をきたすためです。
患者さんは、もまれた後はすっとして楽になった気がしますが、当然の結果として翌日にはさらに痛みが増大することもあります。
患者さんの年齢や症状に合わせてマッサ-ジが適しているかどうかを医師とよく相談し検討することが重要ですので、一概に効果があるとはいえません。
四十肩・五十肩というのは俗称で、古来40歳・50歳くらいに好発する肩の痛みと肩の動きの制限がある肩関節の病気を五十肩と呼んでいました。肩関節周囲炎・癒着性(ゆちゃくせい)関節包炎とも呼ばれています。
ただし今日では、石灰性沈着性腱炎(肩のすじに石灰がたまり痛みが出る)、腱板断裂(肩の動きを助けるすじが切れる)、肩峰下滑液包炎(腱板といわれるすじの上にあり、その動きを助けるクッションの働きをするふくろが炎症をおこす)、肩峰下インピジメント症候群、上腕二頭筋長頭腱炎(力こぶをつくる腕のすじの炎症)、上腕二頭筋長頭腱断裂といった病態のはっきりした病気を除いた残りの肩の病気を、特に五十肩と呼んでいます。
よって痛みの原因がどこにあるのかを調べなければなりません。画像検査は、まずはレントゲン撮影を行います。骨腫瘍(こつしゅよう)や石灰性沈着性腱炎などの有無を調べますが、そのほかの疾患(肩峰下峰下滑液包炎、腱板炎や腱板断裂、上腕二頭筋長頭腱炎や上腕二頭筋長頭腱断など)では異常がないことが多くあります。よって、レントゲンをとって異常がないから、年齢が50歳に近いから五十肩と診断するのは最近の考え方では早計ということになります。
当クリニックでは、そのほかの疾患を詳しく調べるため、診察室で超音波診断装置(エコ一)検査を行います。その場で、肩峰下峰下滑液包炎、肩峰下インピジメント症候群、腱板断裂、腱板炎、上腕二頭筋長頭腱炎、上腕二頭筋長頭腱断裂などがあるかをきちんと調べ、診断を確定します。
そして私の経験上、今まで五十肩と言われてきた肩の痛みの原因は、大半が肩峰下滑液包炎であることがエコ一検査を数多くすることでわかってきました。
診断を確定し、内服、外用薬などで痛みが引かない方は注射をお勧めします。当クリニックでは、エコ一検査で、肩の痛みの主原因と考えられる肩峰下滑液包炎(腱板断裂の場合でも、痛みの原因は腱板断裂に合併した肩峰下滑液包炎であることが多い)などを認めた際には、その場でエコ一ガイド下でブロック(エコ一をみながら痛みの原因の場所に、確実に注射針を誘導し薬液を入れます)を行い、痛みを和らげます。
今まで五十肩といえば痛みが治まるまで、約半年から長くて2年程かかっていたこともあったのですが、上記のブロックを行うことでその治療期間を大幅に短縮できるようになりました。
また痛みの程度により、さらに肩甲上神経ブロックという神経ブロックも行い、痛みをとることに努めています。
そして痛みを和らげた後に、癒着した肩関節周囲を温めて、適切な運動を指導し運動を実行していただくことで関節の痛みや動きを改善していただきます。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)でお悩みの方は、一度当クリニックへお越しください。
肩関節の周囲には、上腕二頭筋(力こぶをつくったときに盛り上がる筋肉)が上腕骨頭の前の溝に近づきすじになる上腕二頭筋長頭腱(じょうわんにとうきんちょうとうけん)や、肩甲下筋(けんこうかきん)、棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょっかきん)、小円筋(しょうえんきん)の4つの小さな筋肉が合流してアキレス腱のようなすじになり上腕骨頭に付着する腱板(けんばん)、さらに腱板の上には肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)というふくろがあります。
これらは肩の痛みの主原因になることが多いのですが、レントゲンでは写りません。大きな腱板断裂であれば、レントゲンで、肩峰と骨頭の隙間の狭小化、腱板の付着部である上腕骨の骨の不整像、ア-チを形成している肩峰に骨棘(こつきょく:骨のとげ)などを認め、腱板断裂があることが予想されますが、腱板そのものが描出されるわけではありません。
今まではレントゲンで異常がなければ、また確定診断ができなければMRI、関節造影などの検査を追加して行い、詳しく調べたのですが、最近では超音波診断装置(エコ一)の進歩によりこれらの多くがわかるようになってきました。
当クリニックではエコ一を用いて肩峰下滑液包、腱板、上腕二頭筋長頭腱などを調べ、肩峰下滑液包炎、肩峰下インピジメント症候群、腱板断裂、上腕二頭筋長頭腱炎(腱鞘炎)、上腕二頭筋長頭腱断裂といった病態のはっきりした疾患を診断しています。
従来は、整形外科領域ではあまり使用されなかったエコ-ですが、最近は機械の進歩により整形外科領域の運動器(筋、腱など)にも応用されるようになって来ました。特に肩関節、肘関節には抜群に威力を発揮し、野球肩、野球肘、五十肩や肩の腱板断裂などを詳しく検査することができます。
たとえば腱板断裂では腱板を構成する4つの腱のうち、棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱の断裂の有無がすべてわかります。また棘上筋腱、棘下筋腱断裂では肩峰下滑液包面断裂、関節包面断裂などといった断裂部位の確定や部分断裂、不全断裂、完全断裂といった断裂の損傷程度まで、すべてエコ一でわかります。
また腱板断裂の多くは肩峰下滑液包炎を合併しており、その炎症の程度(水腫の有無やその程度)もわかります。
いまや肩関節での腱板に対するエコ一解像度は、MRIを超えているとも言われています。
エコ一の利点は、①無侵襲であり、診察室で手軽に使える便利さがあります。②検査中、患者さんと一緒に検査画面を見ることができ、その場で検査結果がわかります。③肩関節であれば動かしながら筋や腱などの動きを確認できます。④検査は痛みや危険性を伴わないため、繰り返し行うことができます。またMRIと違い、⑤健側(痛くないほうの肩)もその場で検査ができ、左右の比較が簡単にできます。⑥MRIやCT検査にくらべて費用は安価です。
そして最大の利点は⑦エコ一を見ながら同時に治療ができるということです。これはエコーで、痛みの原因となっている場所を想定し、例えば肩の痛みは肩峰下滑液包、肩甲上腕関節、筋、腱、靭帯、関節包など多くの原因が考えられるため、痛みの原因と考える部位にエコーをみながら注射の針を誘導し確実に薬液を注入し痛みをやわらげることができます。エコーを用いて、薬液を注入する手技をハイドロリリースと言います。
当クリニックでの初回の肩関節エコ一検査時間は、約2分程度です。(エコ-ガイド下ブロックを含めると約5分程度です。)肩関節疾患でお悩みの方は、一度当クリニックへお越しください。
腱板断裂の場合でも、痛みの原因は腱板断裂に合併した肩峰下滑液包炎であることが多く(夜間痛の訴えが多いです)、当クリニックではエコ一ガイド下で肩峰下滑液包にブロック(エコ一をみながら痛みの原因の場所に確実に注射針を誘導し薬液を入れます)を行い痛みをやわらげます。痛みがひどいときはステロイド剤と局所麻酔剤を注射しますが、痛みが軽減してくればヒアルロン酸の注射に変えます。腱板のすべてが断裂することは少ないので、残っている腱板の機能を賦活(ふかつ)させる腱板訓練は有効です。上記の保存加療で断裂部が治癒することはありませんが、約70%の方は症状が軽快します。
保存加療で肩関節痛と運動障害が治らないときは、手術を行います。
ただし若年者における外傷性断裂やスポーツによる断裂に対しては、手術を行うことが多く、その際には当クリニックでは肩関節専門病院を御紹介します。
膝の注射に関しては、現在は主に2種類あります。膝関節内注射と膝関節外注射です。膝関節内には軟骨の保護剤のヒアルロン酸、炎症を抑えるステロイを注入します。基本的には、ヒアルロン酸でも痛みが軽減することもすくなくありません。 ヒアルロン酸は軟骨を再生はさせないのですが、痛みも十分にやわらげてくれる有効な薬です。時に、炎症がとても強い場合は一時的にステロイドを使用することもあります。
膝関節外には、痛みの原因と考えられる筋・腱・靭帯・関節包などにエコーを用いてハイドロリリースを行います。
日本人の変形性膝関節症の多くは、内側の軟骨がすり減ってO脚変形となり、膝の内側を痛がります。関節は関節包(かんせつほう)という一つの大きな袋で覆われています。よって、内側が痛い人も、外側が痛い人も、膝蓋骨(お皿)の下が痛い人も、皮膚表面近くの神経の走行などの関係から外側から注射することが多いのですが、ひとつの袋の中に注射した液は関節全体にいきわたりその効果を発揮します。
よく近所のおばちゃんに、「あんた、膝の水ぬいてもろたんか?癖になるからやめときや。」と言われたと、診察室でお話になられる患者様がおられます。実際には、抜かなければならないほど溜まっている時点で癖になっていると言っても良いと思います。抜いたから癖になっているわけではありません。
極端な例ですが、「鼻水が出たら、かむでしょう。」と説明することもあります。水とは正確には関節液といいます。正常の関節の中には潤滑油としての役割を果たす関節液が存在します。関節液は滑膜から作られ、同時に吸収されており、生産と吸収のバランスが保たれているため潤滑油程度の最小限の関節液が存在します。その関節液の生産と吸収のバランスが崩れると、関節液が溜まることになります。原因としては、外傷のあと、加齢性の変化(軟骨の磨耗)などの関節内部の炎症があげられます。
たとえば、大量に水がたまると、圧迫感を伴う膝の痛みの原因になります。その際には、水を抜きます。しかし、完全に炎症が治まっていないために、再び水がたまります。このために、水を抜くことが癖になって水がたまるとの誤解をうむことがありますが、そうではありません。関節炎症状を抑えることで水腫は減ってきますから、一般的には十分吸収できない過剰の関節液は抜いて、同時に炎症を抑える薬(ステロイド)や、ヒアルロン酸を注入して関節内部の環境を改善させます。このような適切な治療により水は自然になくなります。過剰な関節液の貯留が続くと、関節の袋が伸び、筋力の低下を引き起こし、更に関節炎が長引くという悪循環に至りますので適切な治療を受けられることをおすすめします。
骨粗鬆症は、骨の量が減少したり、骨の質が変化したりして骨が弱くなり、骨折がおこりやすくなる病気です。
健康な骨の内部は、たくさんの棒状の骨(カルシウムの繊維)が縦横に連結し、強度を保っていますが、骨粗鬆症になると、これらの棒状の骨が細くなったり切れたりして骨と骨の間の空間が広くなり、スカスカの状態になります。
おそらく、この注射はカルシトニン製剤(エルシトニン)だと思います。
この注射は現在では、骨量を増加するという骨粗鬆症の予防のほか、骨粗鬆症にともなう痛みに非常に効果があることがわかってきました。
それゆえ、特に骨粗鬆症に伴う腰痛のある方にはおすすめできます。
骨粗鬆症が進行すると骨折を招きます。代表的な骨折とその部位は
1)大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)骨折:太もものつけ根(転倒したときなど)
2)橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折:手首(転んで手をついたときなど)
3)脊椎(胸椎、腰椎)圧迫骨折:背骨(尻もちをついたときなど)
4)上腕骨頚部(じょうわんこつけいぶ)骨折:腕の肩のほうの付け根(転んで肩を強打したとき)
などです。
骨粗鬆症で骨が弱くなっても、最初は痛みなどがないので、見逃してしまうことが少なくありません。
骨粗鬆症が進行し、まず骨が折れやすいのが脊椎(背中の骨)で、からだの重みに耐えられずにつぶれてしまうことがあります(椎体骨折)。背中や腰が曲がることが多いのですが、症状がない人もいます。脊椎がつぶれて背中が丸くなると、身長が縮み、胃や肺などの働きが悪くなることがあります。
さらには、ささいな動作や衝撃で転倒し太もものつけ根(大腿骨頸部)を骨折すると、そのまま放置しておけば寝たきり状態になり、肺炎、認知症、床ずれなどいろいろな合併症を引き起こし、それこそ命の危険を伴うため、多くの患者さんは手術をうけざるをえません。
高齢者にとっての骨折は、リハビリなどに時間がかかり長期療養を余儀なくされます。その療養場所はさまざまですが、入院療養であればその間からだを動かさないため衰弱して寝たきりや認知症などの介護が必要になるケースも少なくありません。
骨折を防ぐためには、骨粗鬆症を早く発見し、住宅の環境を見直したり外出時に注意することが大切です。
肩峰下滑液包炎、腱板炎やインピンジ症候群を発症し肩の痛みやひっかかり感を感じた場合でもすぐに投球中止(ノースロー)とし、肩を安静にすれば多くは約1から2週間以内でふくろや腱板の腫れや痛みはおさまってきます。その後筋力トレ-ニングやストレッチなどを行い(約2週間)、痛みが再び出なければ、投球を再開してもかまいません。
しかし、痛みを我慢したり、痛み止めを打ちながら投げ続けると、やがて関節窩のまわりの関節唇(かんせつしん)とよぶクッションが傷ついたり、腱板自体(腱板炎)の腫れが波及し、最後には腱板自体が裂けてしまうことがあります。(腱板断裂)腱板は一度裂けてしまうと安静にしてもなかなか治りにくいため、手術をしても投手を続けることはむずかしくなってしまいます。
無理をして腱板が傷つくと、合流してくる4つの筋肉がお互いのバランスを保って収縮(しゅうしゅく:ちぢむ)することができなくなります。すると大きなボールである骨頭は小さな受け皿の上で、バランス良く安定して良い位置にいることができなくなり、支えている太いひもの部分(関節上腕靭帯-関節唇-関節窩縁複合体)に大きなストレスが加わります。さらにその状態で投球を続けると傷がだんだんと大きくなり、不安定になってきます。肩がはずれそうになると肩には痛みがはしり、この痛みにより腱板はさらに緊張し、腱板のバランスを保った収縮をさらに妨げるという悪循環を生みだしてしまいます。このような使いすぎのことをオーバーユースと呼びますが、このオーバーユースの悪循環を断ち切ることができない限り生じた傷(きず)を治すことはできず、最終的には回復が不可能な深い傷になってしまうのです。
野球肩の現在の症状と照らし合わせ、整形外科医とよく相談の上、投球の再開時期を決定されればいいと考えます。
投球障害を訴える人の中には生まれつき肩がゆるい、いわゆるルースショルダーという病態があります。肩の中に明らかな傷が見当たらないにもかかわらず、いろいろな方向に対してずれる肩のことをいいます。
肩のゆるみというものはそれぞれの人が生まれつきいろいろな程度に持ち合わせているものですが、ゆるみが大きいと肩の内外に加わる負担は大きくなります。このような人は投球のさいに大きく腕が振れるので、この肩が長所になることもありますが、その程度がひどい場合には故障もおこしやすくなり、かえってやっかいなものです。
治療は肩関節周囲の筋力を鍛えます。筋力増強訓練で症状が軽快しなければ、手術を行うこともあります。
1)野球による外傷・障害の特徴
社会人野球選手に対するスポーツメディカルチェックの結果、肩関節(26%)肘関節(25%)腰(21%)が主な部位であり、投球およびスイング時の障害が多いのが特徴です。野球は競技開始年齢が低く、それに伴う障害も多く見受けられます。このため、1980年に全日本野球連盟により少年野球に関する特別規則が設けられました。以下に掲載しますので、スポーツ指導者、保護者の皆様は一度お読みください。
2)野球選手の外傷・障害の予防
1980年の少年野球での変化球を禁止する特別規則が制定されたことにより、野球肘予防に多大な効果をあげました。しかし、その後も投球過多による野球選手の肩、肘障害は依然問題となっています。今後、以下に掲載いたしました提言を踏まえ指導者、医師が一体となって予防に取り組まないといけません。
A. 1980年に全日本野球連盟により少年野球に関する特別規則(抜粋)
① 学童部の選手は変化球を投げることを禁止する。(変化球を投げたときはペナルティがあります。)
② 学童部の投球は、過度の投球数にならないように、特に指導しなければならない。
③ 少年・学童部とも1日2試合を限度とする。
④ 少年二部・学童部の試合をナイターで実施する場合は終了時間を原則20時までとする。
B.1995年日本臨床スポーツ医師会、青少年の野球障害に対する提言(抜粋)
① 野球肘の発生は11-12歳が、野球肩は15-16歳がピークであるので、肩肘の痛みと動きの制限、投球フォームの変化に注意を払うこと。
② 野球肩、野球肘の発生頻度は圧倒的に投手と捕手に多いので各チーム投手捕手をそれぞれ2名以上育成しておくことが望ましい。
③ 練習日数と時間について:小学生は週3日以内、1日2時間を超えないこと。中・高生は週1日の休養日をとり、個々の成長、体力、技術に応じた練習を行う。
④ 全力投球は、小学生では1日50球以内、試合を含めて週200球をこえないこと。中学生では1日70球以内、週350球をこえないこと。高校生で1日100球、週500球をこえないこと。なお、1日2試合の登板は禁止すべきである。
⑤ 練習前後は十分なウォーミングアップとクールダウンを行うこと。
⑥ シーズンオフを設け、野球以外のスポーツを楽しむ機会を与えることが望ましい。
⑦ 野球における肘・肩の障害は、将来重度の後遺症を引き起こす可能性があるので、その防止のためには、指導者との密な連携のもとでの整形外科専門医による定期検診が望ましい。
野球の投球時に、肘の内側(小指側)の痛みをおこす代表的な内側型野球肘は上腕骨内側上顆骨軟骨障害(じょうわんこつないそくじょうか こつなんこつしょうがい:リトルリーグエルボー)と肘内側側副靭帯損傷(ひじないそくそくふくじんたいそんしょう)です。
ところでまず、内側型野球肘を理解することで大切なことは、成長期(小学校から中学生)と成人期(高校生以降)に発生するものは全く別のものであると考えなければいけない点です。
というのは、内側型野球肘は、成長の段階に応じて損傷形態が変わってきます。
成長過程を通じて靭帯の最も弱いところは内側側副靭帯が付着している上腕骨内側上顆(じょうわんこつないそくじょうか)という骨、軟骨の部分です。はじめは軟骨を介して骨に付いているため、その軟骨部付近での剥離(靭帯が軟骨とともにはがれてしまいます)が多いのです。
当然軟骨や靭帯はレントゲンには写らないので、このような損傷に対して不十分な治療のまま成長すると、将来再び肘痛がおこり、そのときに骨になった軟骨がレントゲンに写って「骨が傷(いた)んではがれている」といわれて驚くことになります。このように、レントゲンで見つかる上腕骨内側上顆骨軟骨障害は、多くの場合、小学生低学年からの数回にかけておこった骨軟骨損傷で、いわば積み重ねの傷跡なのです。
小学生低学年ではまだ筋力も充分でなく、さほど速い球も投げられないため、このような障害があっても肘の痛みが軽く、障害に気が付かなかったり、痛みを我慢すれば投げられることが多いのです。
しかし、小学生高学年から中学生にかけて速い球を投げられるようになればなるほど痛みが強く、頻回におこるようになります。そして障害に気がついたときには、積み重ねの骨軟骨障害となってしまっているのが現状なのです。まれに遠投などの1回の強い外力で発生する剥離骨折型もみられます。
その後、骨・靭帯の成長が終わり靭帯が軟骨ではなく骨に直接付着するようになると(高校生以降:成人期)、内側側副靭帯が付着している上腕骨内側上顆の骨が強いため靭帯実質部で断裂することが多くなります。(肘内側側副靭帯損傷)まれに靭帯付着部の剥離骨折がおこることもあります。
1回の衝撃で靭帯断裂がおきた場合にはギプス固定を行うことにより保存的治療が可能ですが、野球肘の場合、そのような損傷は少なく、繰り返される、慢性的なストレスが徐々に靭帯を損傷し、靭帯断裂などを引きおこすことが多いのも事実です。
この障害では、日常生活上は全く痛みを生じませんが、投球時に肘の内側部の痛みがあり、強くボールが投げられないことになります。投球時に限った痛みのみが症状であるため、診断が困難で、痛みを繰り返しながらも投げ続けた結果、治療が遅れ、手術を余儀なくされることが多いのです。
すなわち成人といえども、慢性的な外反ストレスによる肘内側側副靭帯損傷を予防することが選手寿命を維持するために不可欠なのです。
ご質問の小学生の息子さんは上腕骨内側上顆骨軟骨障害(リトルリーグエルボー)の可能性が、高校3年生の息子さんは肘内側側副靭帯損傷の可能性が考えられます。
内側型野球肘の障害があるかどうかを、整形外科を受診しきっちり調べることが重要です。
代表的な外側型野球肘は上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎(じょうわんこつしょうとう りだんせいこつなんこつえん)です。
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(野球肘外側型)は野球肘の中で内側型に比べると頻度は少ないのですが、治療に長期を要し進行すると野球を断念せざるを得ないことがあります。
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎は医学的には上腕骨小頭【じょうわんこつしょうとう:上腕骨の肘の先端部(親指側)】の部分的な骨壊死(こつえし:骨の血流が悪くなり骨が死ぬこと)です。
単純レントゲン写真像から透亮期(とうりょうき:初期)、分離期(ぶんりき:進行期)、遊離期(ゆうりき:終末期)に分類されます。
上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎はまず上腕骨小頭【じょうわんこつしょうとう:上腕骨の肘の先端部(親指側)】が橈骨頭【とうこっとう:前腕の橈骨(親指側)の肘の先端部】に繰り返しぶつかることにより、その部位の骨が死んできわめて弱くなります。(透亮期:初期)。
死んだ骨は当然治ろうとしますが、投球を続けることで圧迫力がかかり続けると、生き残った骨と死んだ骨との境目に骨のない隙間ができ、投球をやめただけでは簡単に治らなくなります。(分離期:進行期)。
さらに、投球による圧迫が続けば、死んだ骨が軟骨とともにはげ落ち関節鼠(ねずみ)となるのです(遊離期:終末期)。
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎は、比較的若い時期すなわち小学生から中学生までに多く、11歳、12歳が発症のピークになり、痛みなどの症状が出現するのは14歳前後になります。
その理由として肘の内側にある内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)がまだ弱く、また靭帯の付着部(上腕骨側)も軟骨のまま完全な骨になっていないため外反力【がいはんりょく:肘の内側(小指側)が引っ張られ、外側(親指側)が圧迫される力】を支えきれず、外側の圧迫による障害がでると考えられています。
野球肘以外の肘のスポーツ傷害には、肘の外側(親指側)の上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん:バックハンドテニス肘)、そして肘の内側(小指側)の上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん:ゴルフ肘、フォアハンドテニス肘)などがあります。
上腕骨外側上顆炎は、スポ-ツではテニスのバックハンドなどで前腕の伸筋群(しんきん:手首や手指を伸ばす筋肉)を使いすぎると起こります。
また、上腕骨外側上顆炎は、日常生活動作などでも前腕の伸筋群を使いすぎるとおこります。日常生活の中で発症する場合は30~50歳台の中年女性に多いのが特徴です。タオルをしぼる、物をつかんで持ち上げる、はき掃除をするなどの動作時に痛みが出ます。
上腕骨内側上顆炎は、成人のゴルフ、テニスのフォアハンド、野球、あるいはスーツケースの運搬などで前腕の屈筋群(くっきん:手首や手指を曲げる筋肉)と回内筋群(かいないきん:手首や手指を内にひねる筋肉)を使いすぎるとおこります。
上腕骨外側上顆炎、上腕骨内側上顆炎ともに治療はまず保存療法(手術をしない)を行います。
1.手首や指のストレッチをこまめに行います。
2.スポーツや手を使う作業をひかえ、湿布や外用薬を使用します。多くの場合、これで数ヶか月以内に痛みが軽くなります。
3.局所麻酔剤入りのステロイド注射を行います。
4.テニス肘用バンドを装着します。(使用方法は医師にご相談下さい。)
などです。
保存療法で治らない時は手術療法を行うことがあります。関節鏡を用いて、筋膜切開術、筋膜切除術、筋膜前進術などがあります。
上記の症状から膝の半月板損傷の可能性が考えられます。突然膝の曲げ伸ばしができなくなることを嵌頓(かんとん)症状(ロッキング)といい、半月板損傷の典型的な症状です。
McMurray(マクマレ一)テストなどの徒手検査、超音波診断装置(エコ一)検査やMRI検査を行い診断します。
半月板損傷だと診断された場合で、リハビリテ一ションなどの保存的治療で症状が改善しない場合には手術を行います。
若年性のスポ一ツ外傷による半月板損傷では、半月板辺縁部での縦断裂(半月板の辺縁部にそって、平行に亀裂が走る断裂です。)が多く、関節鏡視下での半月板縫合術を行います。
ただし前十字靭帯損傷を合併している場合は半月板縫合術だけでは再断裂の頻度が高いので、靭帯再建術も同時に行います。
一方、その他の水平断裂や横断裂に対しては部分切除術を行います。
スポ一ツ外傷による円板状半月板の損傷に対しては、損傷が辺縁部まで及んでいない場合は関節鏡視下に中央部のみを切除して辺縁の健常部を温存し、正常の半月板の形に近くなるような部分切除術を行います。
辺縁部を含む損傷には正常な辺縁のみを温存し大部分の半月板を切除する半月板切除術を行います。
上記の症状から膝の内側側副靭帯(MCL)の損傷の可能性が考えられます。
内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい:MCL)損傷は膝の靭帯(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯)損傷の中では最も頻度が高く、膝に大きな外反力(膝をX脚のようにする力)が加わって発症します。ラグビ一などの互いに衝突しあうスポーツやスキーなどでも受傷します。損傷部位は内側側副靭帯(MCL)の大腿骨起始部(きしぶ:靭帯が骨につくところ)付近が多く、同部位を押すと痛みを訴え(圧痛:あっつう)、膝を外反すると痛みが増強します。圧痛のみで、外反不安定性をほとんど示さない軽症例(第1度損傷)から著明な不安定性を示す重症例(第3度損傷)まであります。
第3度損傷は、ほとんどの場合、前十字靭帯損傷を合併しており大量の関節血腫を認めます。
内側側副靭帯(MCL)は単純レントゲン写真で写らないので、ストレス撮影(膝を外反位にすることで関節の開きを見る検査)で健側(けんそく:痛くない側の膝)と比較し、損傷の有無と程度が診断できます。そのほか超音波診断装置(エコ一)検査、MRI検査で損傷の有無を調べることができます。当クリニックで行うエコ-検査では靭帯そのものを見ることができ、靭帯が腫れている、または切れている、どこで切れているか等もわかります。エコ一でのストレス撮影も行うことができて、靭帯が切れている場合は膝の関節が開くのを健側と比較し確認することができます。
ただし、半月板損傷や前十字靭帯(ACL)損傷の合併の有無を確認することが重要です。
内側側副靭帯(MCL)の単独損傷であれば外反不安定性は小さいので症状に応じて装具(サポ一タ一など)装着などによる保存加療を行います。4~6週間でスポ-ツ復帰が可能となり、予後は良好です。
半月板損傷を合併した場合や前十字靭帯(ACL)損傷を合併した複合靭帯損傷にはしばしば手術が必要です。
あまりスポ一ツ活動を望まない中高年者には、装具(サポ一タ一など)を装着し、筋力増強を中心とした保存加療で経過をみます。
ただし、日常の生活動作で膝くずれを繰り返す場合は再建手術が必要となることがあります。
当初は急性外傷の処置(RICE処置:Rest安静、Ice冷却、Compression圧迫、Elevation挙上)を行ってください。
RICE処置とは外傷の初期に起こる出血や腫れを最小限に抑え、治癒の促進を促す治療法のことです。
RICEは前述しましたように、4つの基本的な対処方法の頭文字をとったものです。
Rest:安静
Ice:冷却
Compression:圧迫
Elevation:挙上
1.安静(Rest):腫れと痛みが強いときは約1週間ギプス固定を行なうこともあります。
2. 冷却(Ice):ビニール袋やアイスバックに氷を入れて、患部を冷却します。約15~20分間冷却したら(患部の感覚がなくなったら)はずし、また痛みがでてきたら冷やします。これを繰り返します。(1~3日)
凍傷にならないように注意してください。
3. 圧迫(Compression):局所の出血や腫れを防ぐ目的で弾性包帯を用いて行います。常に血行障害に注意してください。
4. 挙上(Elevation):足先での血流うっ帯を防ぎ、腫れとむくみ(浮腫:ふしゅ)を減らす目的で行います。できれば心臓より高い位置に患部を置くことが大事です。
上記の症状からアキレス腱断裂の可能性が考えられます。
アキレス腱の断裂は、30~50歳の中年によく起こります。加齢によって腱自体が変性している状態で急激な足の動きにより発生します。若い人でもアキレス腱炎の既往のある人に発生することもあります。ジャンプやダッシュなどで、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋:かたいさんとうきん)が緊張しているときに、足関節が急激に背屈(はいくつ:足首を上方にまげる)を強制されるとアキレス腱が断裂します。
ジャンプやダッシュをしたとき、"ふくらはぎを棒でたたかれた"、"後ろからボールが当たった"、"後ろからだれかに蹴られた"などの感じがして立てなくなりますが、しばらくすれば歩くこともできるようになります。
受傷時に、腱が断裂したときの音(バチッとかパンとか)を自覚することもあります。
アキレス腱が断裂すると、アキレス腱部に痛みおよび腫れ(はれ)を認め、損傷部に陥凹(へこみ)を触れます。アキレス腱が断裂すれば、つま先立ちができなくなります。
アキレス腱断裂は、その多くは踵骨(しょうこつ:かかとの骨)より約2~6㎝ 膝寄りの部分で断裂します。
診断は完全断裂の場合、容易ですが、部分断裂の場合には、超音波診断装置(エコ-)検査で診断できます。エコ一検査では断裂の部位、断裂の状態を確認でき、またエコ-は治癒過程の観察にも使用できます。